Machine embroidery memo

フリーモーション刺繍、横振り刺繍、刺繍ミシン、ミシン刺繍のあれこれ

ミシンのセッティング

フリーモーションを始める前に

ここではフリーモーション刺繍を始める前に必要なミシンのセッティングについて詳しく説明します。まずミシンを使用する前に、汚れがないか、埃がたまってないかなどを確認しましょう。特に下糸の釜周りには埃がたまりやすいので注意しましょう。

 

ミシンのセッティング手順 (家庭用ミシン)

 

  1. ドロップフィードをオン(送り歯を下げる)
  2. 拡張テーブルをセット
  3. 縫い目の長さを「0」にする
  4. 直線かジグザグの設定をする
  5. 押さえをフリーモーション用に変更
  6. 針の交換、チェック
  7. 上糸、下糸をセットする
  8. 糸調子を合わせる
  9. 段差のチェック
  10. その他

ミシンのセッティング手順

ドロップフィードをオン

生地を自由に動かすために

フリーモーション刺繍を始めるには生地を自由に動かせるようにしなければなりません。そのために送り歯を下げておきます。送り歯が下がっているので何もしなければ布は動きません。自分で布を自由自在に動かして縫います。これがフリーモーションです。

 

送り歯を下げる

送り歯を下げる機能はドロップフィードと言います。オン、オフのスイッチがあります。ミシンによりスイッチの場所は異なります。側面にあったり、補助テーブルを外してフリーアーム状態にすると出てくるなど説明書をご確認下さい。

 

古いミシンは送り歯を覆うカバーが付属していたり、送り歯そのものを取り外して布を送らないようにできる場合があります。

 

送り歯が下げられない場合

フリーモーションは送り歯が出ているとできません。ドロップフィード機能やカバーがない場合、紙やテープで送り歯を覆ってしまえばフリーモーションは可能です。

 

拡張テーブルをセット

拡張テーブル(ワイドテーブル)がないと刺繍枠がずり落ちてしまう恐れがあります。安定した状態で枠を動かすために必要です。

 

縫い目の長さを「0」にする

縫い目の長さと幅を「0」にします。ミシンによっては「0」にできない機種もあるそうです。なるべく「0」に近づけましょう。

 

直線かジグザグの設定をする

フリーモーションはジグザグでもできます。直線、ジグザグ、どちらかに設定にします。

 

押さえをフリーモーション用に変更

通常の押さえではフリーモーションはできません。キルト押さえ、ダーニング押さえなどのフリーモーション用の押さえに変更します。慣れたら押えを外して縫うこともできます。

 

針の交換、チェック

フリーモーション刺繍は縫製用の針でも可能ですが、上手く縫えない場合はミシン刺繍用の針に交換してみましょう。目飛び、糸切れしにくい形状になっています。

 

また、針が摩耗していたり曲がっていると糸が毛羽だったり目飛びします。新しいものに交換しましょう。それでも縫い目が安定しない、縫い目がつったりする場合、抵抗や摩擦を減らすために、細めの針に交換すると上手くいく場合があります。糸に適した針を見つけましょう。

 

糸をセットする

取扱説明書通りきちんとセットしてください。
糸かけもなかなか奥が深いです。参考になる記事を紹介します。「糸かけの際は押さえレバーを上げる」など初心者さんが見逃しやすい点を丁寧に説明されています。

 

【ミシンの練習】「ポイントたくさん!絶対に失敗しない上糸のかけ方」|ソーイングスクエア

【ミシンの練習】家庭用ミシン 水平がま 「下糸のかけ方」|ソーイングスクエア

 

糸調子を合わせる

正しい糸調子とは

縫製の場合、上糸と下糸が同じテンションでつり合うように調整します。刺繍は違います。生地の表側に下糸が出てこないように調整します。テンションの強さは上糸 < 下糸 になります。

 

正しい糸調子は、ミシンの状態、使用する糸や生地、技法などによって変化します。その都度、試し縫いをして調整を行います。

 

悪い糸調子の例

  • 表側に下糸が見える
    上糸のテンションが強すぎるので緩めます。下糸が見えなくなるまでテンションの調整をします。生地の裏側に上糸が回り込んでいる状態にします。
  • 縫い目が浮いたり裏側がループ状になる
    上糸のテンションが弱すぎる可能性があります。

 

下糸の種類による調整

フリーモーション刺繍では下糸の太さは上糸と同じか細くします。太さ以外に制約は特にありませんが刺繍ミシンの下糸を利用すると良いでしょう。

 

家庭用刺繍ミシンにはメーカー指定の純正糸があります。テンションが強く表に出にくい加工がしてあります。業務用の刺繍ミシンには伸縮性の少ない綿やポリエステル100%の細めのスパン糸が使われます。

 

下糸の種類別の調整を大まかにまとめます。糸調子は標準にあると仮定しています。ミシンの状態、生地、糸などにより異なりますので参考程度にご覧ください。

 

  • 上糸、下糸が同じ糸の場合
    上下同じ糸なのでテンションの問題は起こりにくく下糸が多少表に出たとしても目立たないのが利点です。

  • 家庭用刺繍ミシンの下糸の場合
    表に下糸が見える場合、上糸のテンションを緩めます。
    (糸調子ダイヤルなどの数字を小さくします)
    糸が生地の表に出にくいように加工がしてあります。

  • 下糸の太さが上糸より同じか細い場合
    表に下糸が見える場合、上糸のテンションを緩めます。
    (糸調子ダイヤルなどの数字を小さくします)
    必要なら下糸のテンションをきつくします。
    (ボビンケースのネジを締めてきつくします)

 

業務用刺繍機の記事ですが参考になるので紹介します。フリーモーション刺繍も同じと考えていいでしょう。糸調子と生地の裏表の状態が良くわかります。

 

「PRシリーズのトラブルQ&A その4「糸調子が合わない」 | みしんやさん

 

水平釜の下糸調整(裏技)

使用する糸によって、下糸のテンション調整に迫られる場合があります。水平釜は通常調整ができないのでその糸は使用できません。しかし、裏技があります。画像付きでわかりやすい記事を紹介します。

 

工業用下糸を使う裏技♪ : ミシン刺繍オリジナルデータ制作♪ 笑顔で手作り

 

この方法はメーカー非推奨の方法です。ボビンケースのネジ位置を元に戻せなくなったら縫製の糸調子が狂ってしまいます。縫製用とは別のものを刺繍用に用意しておくと安全です。

 

どうしても下糸が出てしまう場合

上糸と同じ色のミシン糸を使用すると目立ちません。刺繍した後、少し下糸が出ていることに気づいたら布描き用マーカーで色をぬって対処しています。

 

技法によって異なる糸調子

糸調子は基本は上糸緩めです。しかし、ドロクワーク、ホワイトワークなどの技法やステッチにより異なります。わざと下糸を表に出して装飾する技法もあります。それぞれに合った糸調子に調整します。

 

糸調子のチェック

糸調子のチェックをする時は、ループやジグザグのラインを縫ってみましょう。カーブや方向を変えるポイントで不具合が出やすいからです。

 

段差のチェック

縫っている時に刺繍枠がスムーズに動かないとストレスを感じます。

 

ミシンによっては延長テーブルと本体の接続部分などに段差があり引っ掛かることがあります。次のような対処法があります。

 

  • カレンダーなどの大きくつるつるした紙でテーブル全体を覆う
  • 段差にテープを張る
  • キルティング用のスライダーマットを使用する

 

その他

薄い布の場合、布が下に沈み込んで上手く縫えない場合があります。ジグザグを使用しない場合は直線縫い針板に交換すると上手くいく場合があります。マスキングテープで針穴を覆うのも同じ効果があります。