はじめに
今回はフリーモーション刺繍の歴史について簡単に紹介します。
※素人が趣味で調べたものて把握しきれていないこともありかもしれません。予めご了承ください。
足踏みミシン時代
20世紀になり手回しだったミシンに代わり足踏みミシンが普及します。両手が自由になり刺繍枠を使用したミシン刺繍の技法が確立していきます。それまでハンドで行っていた刺繍の技法をミシンの直線縫いで再現していきます。
その技法をざっとあげると
- ランニングステッチ
- サテンステッチ
- 陰影のある刺繍
- 添付刺繍
- ホワイトワーク
- カットワーク
- ドロンワーク
- アップリケ
などなどです。これらの技法はリネン製品や装飾品、服飾品などに使われました。ミシンは「sewing machine」のマシンがなまったものです。ハンドからマシン(ミシン)に刺繍技術が広がっていきました。
1911年に出版された「Singer instructions for art embroidery」にはその高い技術が紹介されています。足踏みミシンでここまでできるなんてと驚いたものです。私がロシアのミシン刺繍講座で学習したのは主にこの技法です。
[参考書籍]
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電動ミシン時代
Thread painting
1960年代、足踏みミシンに代わり電動ミシンが普及していきます。ジグザグ機能が加わり表現力が多彩になり「Thread painting」が登場します。布に糸を使って絵画のように景色や花などを描く技法です。違った色の糸を混ぜ合わせるように縫うことで絵の具の混色のような効果を出します。
この時代、次のようなステッチや技術が生まれました。
- 上糸のテンション強め、下糸のテンション弱めのステッチ。生地の上に下糸が出て立体感が出ます。(Whip Stitch, Feather Stitch, Cable Stitch)
[参考サイト] Moving on with Free Machine Embroidery - The Sewing Directory - ジグザグの幅を変化させるために縫いながら右手で振り幅用のレバーを動かす技術
- 「Thread painting」では下絵を絵具で縫ってから刺繍する手法もあります。
糸調子の仕方によりステッチが立体的になります。
][参考書籍]
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キルト
海外では足踏みミシンの時代からミシンキルトはありましたが電動ミシンになりますます身近なものになりました。フリーモーションの技法を使用してキルティングしたり、表地を刺繍やアップリケで装飾することが普及していきました。
テキスタイルアート
刺繍、コード、リボン、ビーズなどをフリーモーションの技法で組み合わせた独自のスタイルの作品も出てきました。装飾品、服飾アイテムなどに利用されています。リボン刺繍、ビーズ刺繍の技術も進みました。
[参考書籍]
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広い利用分野
電動ミシンが普及した時代のクリエーターはフリーモーションの技術をアート、キルト、装飾など様々な分野に利用しています。新たなステッチを開発したり素材を重ね合わせてテキスタイルを装飾したりして独自のスタイルの作品を作り出しています。
日本では
日本でもその当時、電動ミシンによる刺繍の普及にメーカーが努めていたようです。ブラザーミシン刺しゅう研究会が発行の「ブラザー ミシン刺しゅう」が出版されています。ミシン刺繍教室もあったようです。しかし刺繍ミシンの登場とともに廃れてしまいました。
現在
足踏みミシンの技術は電動ミシン、刺繍ミシンの登場で段々と忘れられていきます。しかし、今でも東南アジアのKebaya、ポーランドのウォーヴィチ刺繍、トルコのホワイトワーク、ロシア、ポルトガル、ブラジルなどの人々に継承されています。電動ミシンの技法も様々なタイプのクリエイターに受け継がれています。
日本でも現在この技術で創作活動をされている方はおられますが少数派と言えるでしょう。しかし、少数派だからこそユニークな存在であるとも言えます。